読んでいるうちに見方が2転も3転もしてしまった本。

映画『ラブ&ポップ』の原作や13歳のハローワークで有名な村上龍の対談集。
対話とアンケートにより編成されています。
2001年の本だが今でも十分議論は通用します

目次は以下
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【序】「教育の崩壊」という嘘
・教育の在り方-「出席停止」措置をめぐって-VS藤原幸博
・学校教育の限界 VS河上亮一
・「子育てへの投資」という考え方 VS三沢直子・鈴木浩之
・「格差」というタブー VS小川洋
・「少年犯罪」は変わったのか VS江川紹子・小宮由美
・中学生1600人アンケート


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最初の26ページだけでも読む価値はあったと思います。
内容はおよそ300ページ。
最初から読みやすく飛ばして読んでいましたが
とちゅうからペースダウン。
内容が自分が考えていたこととまるっきり違ったことに愕然とした。

対談はそれぞれ
学校の現状、教師・教育の現状、子育ての現状、社会の現状、少年犯罪の現状を語っていました。

社会問題としてニートやフリーターが多く語られてきて、
それらは徹底したキャリア教育で補えるだろうといろいろと調べてきましたが、
社会の現状として「一億層中流」の裏に貧困層が確かに存在していて
その家庭の子どもたちへの学費の割合も額も少なく、進学もままならない。
じっさいに年間10万程度の授業料さえ払えない家庭があるそうです。

その子どもたちが大人になっても親と同様、働いても一向に裕福になれない悪循環が存在しているらしいです。

P168より
生徒にしてみれば、結構いいセンスを持っていたり、能力的にも恵まれたものがあっても、親に教育的な関心がなかったり経済的な余裕がなく、学校に行ってもモチベーションがわかないということになります。大学に行って、将来、理工学部を出て企業の研究者になるとか、そういう世界は全然見えてこない。高校はつまらないけど、とりあえず高卒の資格はとって,仕事をして車を乗り回したい。そういう世界しか見えてこないんです。

真の問題はワーキングプアにあったようです。
メディアは貧困層に対しての事実を隠し、政治は貧困層に対し無関心。
息子が不祥事を起こし退学になりそうなら
「生活保護がもらえなくなるから」
と泣きついてくる親もいるそう。
子どもが学校に行く理由は子どもの将来のためでなく家族の生活のためというのです。

本書の結論は
・社会が変わり大人が目的を持てずにいる
・教師の指導力不足は元からあった
・子育てへの支援と充実が必要
・貧困層というマイノリティへの支援問題がある
・子どもたちは変わっていない。ただ将来が不安だから今に安心を求めるようになった。

しかし、子ども側はそんな変化してしまった社会や大人たちに対して自分の意見をはっきりと持っており、アンケートにはそれが示されていた。
著者はアンケートに対しこう締めている。

P285より
アンケートの結果はわたしの予想を超えていた。中学生たちは、将来に不安を持ちつつ、周囲の大人が生き方を示せないことに苛立ちながら、何かわくわくすることを探そうとしていて、そして何とかサバイバルしようとしている。
(中略)子どもが病んでいるわけではないということは伝わってくる。この本のタイトルはアンケートに協力してくれた中学生の回答をすべて読んだあとに、考えついたものである。


まだ教育自体は崩壊しておらず、子どもには希望がある。
わたしたちはマイノリティ(少数派)ばかり見すぎて理解できず困り果てているようです。

細かい話は本書を一読してください。