宇都宮大学の丸山先生が来て「技術教育特論?」の集中講義をしていただいた。

内容は職業技術教育の歴史から今の技術教育の問題点を考えると言うものだった。

院生向けの授業であったが特別に参加させていただいた。

歴史的事実の羅列だけでなく、メッセージ性と示唆にとんだとても勉強になる講義であった。

以下簡単に振り返りたいと思います。
 1日目

ガイダンスと学校制度などについてと僕らの自己紹介と研究紹介をしご意見をいただいた。

・歴史研究のポイントは時期区分。
・戦前の職業教育は進学するエリートは受けなかった、戦後になり全員が受けることになる。
・戦前派国家のための教育(ex教育勅語)、戦後は個人の発達にのみ奉仕する教育
・戦前教育は植民地を考える必要があるが日本の歴史研究はその部分が遅れている
・戦前は植民地、性別、進路により異なる差別的な構造
・進路指導により子どもたちの振り分けがされていた
→現在でも進路指導は残っており、有事の場合教師が子どもたちを戦争に送り出すコトも考えられる
・政治による技術者の冷遇
→技術官僚の政治参画を考える
・技術教育を教育学の中に位置づけて考える

職業教育のできた経緯と学校制度、政治のパワーバランスの部分などを教えていただいた。また大学で研究に学ぶものは「鋭い課題意識」と「研究方法論」である。との言葉もいただいた。

2日目

学校制度の移り変わりと、世界の職業教育について学んだ。

・戦前は進学のための下位学校だったが、戦後は学習を積み上げる構造になった。
・お金がなければ進学ができなかった
→師範学校のみ奨学金で文具も用意された、高柳健次郎の成功が有名
・新教育基本法→「心身の発達に応じて」「?の基礎の上に」
・「教授」中心から「学習指導」への転換
→それまでは教授細目、教授要項→戦後は子どもが学ぶというスタンスに
・職業教育はデュアルシステムなど徒弟制度中心型、アメリカなどの学校教育中心型、企業内教育中心型の3タイプ。日本は企業内型。
・日本的経営・・・特殊日本的な雇用慣行→年功賃金・終身雇用制・企業別労働組合
→経営家族主義
・経団連、経済同友会、日本商工会議所
・公的職業基幹が予算の問題で危険な状況
・教育課程の自主編成運動

講義中、ニートやフリーターはなぜ増加したか?と言う問いに人件費削減のための大企業による陰謀論を話したら意外と外れていなかったらしい。

以下の本にその詳細が書いてあると紹介してくれた。

内容は、管理職や総合職、技術基幹職は従来どおり、専門職は成果配分、一般職は有期契約にしてしまおうという「新時代の『日本的経営』」を経団連が1995年に発表していた。というもの。
経済人の一部しか知らないこの発表を教育者は知るはずもなく勤労感に原因を求めてしまったと言います。これは非常に興味深かったです。

また研究について「重要なのはどう考えるか。結論は何か、なぜそう考えるか、そう考えるのは適切か」と助言も頂きました。
「教育学者は子どもの発達の視点から無視できない論述や研究を行うことが政治に対して行うべきこと。政治家に直接働きかけて動かすことではない。」
ともおっしゃっていました。


3日目

技術教育の学力について、技術論、戦前の教育についてを学んだ。講義中、非常に有意義なディスカッションも展開された。

・技術でつけたい力は、技術に関する科学的認識(知識)、作業に関する基本(技能)、技術観、労働観
→勤労観を入れることは議論になったが、勤労がなければ技術を生かせない
・学力低下議論は60年代から行われている
・女性進学者増加による女子学生亡国論と家庭科
・日本型高学力→学力は世界の高水準で分布が小さい、記憶型で剥離しやすい、学ぶ喜びを伴わない
・技術論→技術は現在は労働手段体系説、生産の道具や方法の体系である。
・意識的適応説:生産的実践における客観的法則性の意識的適用が技術
・手工科

「技術は働くことを持って生きる、技術の教育をするときも働くことに触れる、技術教師は現実と触れる重要な教科と言う自信を持ってほしい」というメッセージをいただいた。技術教育の学力論は他教科に比べかなり発展しているらしい。以下の本に詳しい



4日目

世界の技術教育の歴史、戦後日本の技術教育について丸山先生の博士論文とともに学んだ。

・世界の技術教育の歴史→ロシアが一番最初。シベリア鉄道敷設のための技術者養成が特徴
→課題と道具を用意して段階に応じて問題をといていくもの。今まで現場でしか得ることのできなかった職業教育を学校に持ち込んだ。
・アメリカでも応用、日本は学校の中に工場を置くと解釈を誤る。
・手島精一:教育学に科学の方法を用いることに注目

■技術科の問題点
・社会的生産における技術(×社会的生産技術:工場のライン)
・ものづくり主義
・手工業的
・小・高校には教科がない
・時間数
・特別支援の子どもたちはいまだ職業・家庭科

・鈴木寿雄:題材とは「家庭生活を充実させるもの」→ものづくり主義の元
・職業教育と進路指導が残っている
→子どもたちを戦場に送り込む危険性も
・家庭科との関係→杉江清


資料をすべては読み返せていないがざっとメモだけでもこれだけの内容。
「教育の研究は外側の制度や歴史でなく、実践など内側のことをやるべき

「技術科の歴史から小中高一貫した技術科のカリキュラムを研究会で作るべき。」
「カリキュラムの研究者:水内宏『歴史をこえていい授業は必ず残る。いい実践を作ることが大事。いい実践は必ずあとまで影響を残す。」

など自分の言葉と他人の言葉も交えメッセージをくださいました。
技術教育の研究者である田中喜美先生の流れを組む方だけあってさまざまなことを学習することができました。

ご本人も、これからの研究、自分の仕事として世界の技術教育史の中に日本の技術教育を位置づけるとおっしゃっていました。

歴史は従来から苦手だったのですが、そんな苦手を感じることなく終わっていきました。
本当によい勉強の機会に恵まれたと思います。ありがとうございました。

終始一貫して裏に通っていたメッセージとして、課題意識を持てという言葉が非常に心に残りました。
これは「16歳の教科書」で英語の大西氏が語っていた違和感を感じることは個性で、それを追求していけば人生を変えることが或るという話に近いのではと感じた。

そしてスケールが違うのはその違和感が自分を変えるのでなく教育を変えると言うこと。

最後にもらった資料を重ねてみたら
c8db2240.jpg
こんな大量に・・・
本当にありがとうございます。