尾木さんのおかげで教育問題の現状と課題が理解できました、ある程度。

副題?ダメ教師はなぜ増えるのか?について知りたくて買ってみた。
本書「教師格差」は齢60になる教育評論家がダメ教師と教育再生会議に説教をたれるものである。

目次
序章 病める教師―教育の現場から
第1章 教師力は落ちたのか
第2章 「逆風」にさらされる教師
第3章 教師の条件
第4章 「教育再生論議」に見る、教師の未来
第5章 「教育再生」への提言

目次だけ見ると、たしかに論点をきちんと抑えた佳き啓蒙本に思える。実際これらの論点に私としては異論はない。

問題は、その姿勢。



まず本書の構成である。
序章で"教師たちは病んでいる"。としておきながら
第1章では
教師の指導力は確実に低落傾向にあります


とぶった切る。

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そう。傷口に塩。これじゃ若手は耳を傾けませんて。特に問題教師は本書を手に取ることすらしないから問題なんでしょう。

それでも我慢して読み進む。

P. 63
教師が、学年単位などで旅行をする際には、自分のことを「ビジネスマン」だと名乗るケースが増えているとも聞いています。(中略)これはつまり、教師という職業を名乗ることを恥ずかしがっているからです。

P62
自分の仕事に対するプライドを喪失しているわけですから、そのことだけを見ても、子どもの教育にとっては問題となります



旅先で名を名乗れって、どこの市役所ですか。

旅行に行くならば、誰だってバカ騒ぎくらいしたい。

旅行先に行って「教師」と名乗ってバカ騒ぎしたのであれば
「教師があんなにはしゃいで・・・」と思われるのは誰だって予想がつくだろう。
だからといって大人しくするのは面白くない。
リミッターを設定してある宴会が面白いかは僕には想像できない。
旅行は楽しみたい。でも教師という仕事に誇りを持っていて、自分の行為でそのブランドを汚したくない

だからこそ偽ってしまうのではないの?

そのジレンマの上での行動なのになぜ決め付けられて批判される必要があるの?

本書に一番欠けている視点。それがパースペクティブ、ではなくて「客観性」。一部の教師の不祥事を取り上げてはだめだ。教師の仕事を取り上げて嘆いていてはだめだ。印象論だけでもムナクソ悪いのに、さらに加齢臭の付きまとう説教やべき論。

「自己実現としての教師」という発想がないのではないだろうか。とさえ思う。

教師は子どもに夢を託し、詰め込む仕事ではない。
教師としてよい仕事をする事が自己実現につながる。
実はこのあたり、大学の先生にも言える。

本書の主張は抜粋すると"教育は子どもたちのもの"である。

それだけでは教師は集まらない

また、
社会から見て子どものためなのか、
保護者から見てか、教師から見てか、
子ども本人から見てかでかなり変わってくる。

まずは教師が学習するのではない、成長することを念頭において話さねば。

教育するものに対しても教育は有効なのだ。
学習させようとするものに対しても学習させることは有効なのだ。


意味のねえ精神論説く暇あるんだったら、技術を身につける場所と、身につけた後のビジョンを説いてくれっての - NC-15
精神論しか言えねえ説教ジジイはフナムシほどの価値もねえよ。

とまでは言われないだろうけど(実際本書には精神論はさほど登場しない)、偽善者と間違えられて宗教じみてくるのがオチのように思える。(実際にググッて見ると関連検索でひどい結果が見て取れた)

途中で、ビジネスマナーは必要であると指摘し、他方でビジネスに学ぶのは良くないと書いてある。一見矛盾する意見に頭の中でははてながいくつも並んだ。

とはいえ、本書に書いてあるお品書きそのものは間違っていない。加齢臭に鼻をつまめば何とか味わえる。上の目次を出して、それに沿って一冊書き上げただけでも、私は本書を評価する。

だけど、今度はもっと視野の広い人のそれを読みたい。同じ教育業界人でも市役所でなくて大手教育ベンチャーが書いたの。

ちなみに財界の大物曰く
大前研一「答えのない世界」を生き抜く鉄則 より

親子の会話が成り立たない理由も、子供の方が世間を感じているからです。親が子供を学校の送り出す時に、「先生の言うことを聞くのよ」と言って送り出したら、ろくな子供になりません。「間違っても先生の言うことを聞いたらダメ」、「分らないことがあったら手を挙げて質問しなさい」、「そういう勇気を持ちなさい」と言って子供を育てて下さいよ。今や、先生だって答えが分からないんですから。

 家で親の言うことを聞いて、学校で先生の言うことを聞いて、会社に行って上司の言うことを聞いていたら、まったく役に立たない19世紀型の人間が育ちますよ。なぜかということを自分で考える、「僕にはこう見える」、「僕はこう思う」、「その証拠はこれだ」と。そして、ほかの人がまた違うことを言ったら、なるほど、そうすると僕の考えと君の考えを足してみるとこういうことになるのかなと、まったく新しいアイデアにまとめ上げる。ここにリーダーシップが出てくるんです。日本はこういったリーダーシップ教育をまったくやっていません。



と印象論ではいい勝負。まったく意見が正反対なのが面白い。

あとHPもう少し見やすくしてほしいですね。

参考:加齢臭付きの正論 - 書評 - プログラマー現役続行(弾さんごめんなさい)