妹尾先生とは二度ほどお会いしただろうか、かなり切れる上に目が優しい人だ。今度サインもらおう。
本書で読み取ったことは以下の三点。

・マネジメントとは「局所最適」でなく「全体最適」「長期最適」
・著者の教育観と技術観
・著者の人情味あふれる人間性

本書は東大最先端研の妹尾堅一郎氏の会心の一冊、一応秋葉原再開発のドキュメンタリー的な売り文句が書いてあるのだが、構想と秋葉原に対する著者の「粋な人情」を読み取るのが正しい読み方だろう。要約で良ければこちらで読める。

先月初めてアキバに遊びに行ったのだが、帰ってきてすぐ妹尾先生がうちの大学にお越しになり宣伝していったので興味本位で手に取った。

やはり現場を見た後にそのすごさを知ると新鮮だ。もう一度アキバに行きたくなる。

まず姿勢について。
著者の開発に対する姿勢は「それがいかに街のためになるのか」を一貫するのである。

例えば「全体最適」。

街の開発に必要なマネジメントは
短期間でこれだけ成果が上がったなどの「短期最適」でもない、
この点では大いに成長が見られたという「局所最適」でもない。
それは全体として成長する、しかもいい循環を繰り返す「全体最適」なのだ。

そしてその最適化には多くの視点が必要となる。
多くの変数を見つめ、システム思考による思考実験を繰り返し、何を産学官で行うべきかを考える必要がある。
その変数、すなわち「視点」も本書には分かりやすく書いてあるし、(多少強引かなという部分もあったけど)何を意識すべきか、例えば「相似と相違」「変化と継続」など、このようにまとればそれぞれの関わり合いも明快だ。

そしてそれ以上に大事なのがコンセプト
変数をメタ化し、決してポジティブリストでない、情報と経験とロジカルに裏打ちされた根拠を伴うコンセプトが並ぶ。

また第二の分野である人材育成についてもやはり面白い。大学に講演に来たときはアカデミズムを批判しながら互学互習の学習効果を主張して行かれたのだが、これは特に最先端分野で必要になる。

当人曰く「体系化されたものを学ぶのがアカデミズム。体系化されていないものが最先端技術。であれば最先端を学ぶのには互学互習によるものが最適。」

これは技術教育に取り入れたいと考えている。

明記はしていないが様々な視点を知る事が教育として大切であると考える。

テクノロジーの内側を教えるのであれば教授スタイルでよいだろうが、テクノロジーの外側(社会的な部分)を学ぶ事は、すなわちいろんな視点を取り入れる事が重要である。

また技術について
先端技術とは、常に危ない側面を持っているのです。一つ間違えば大量殺戮兵器になるかもしれない、と思えるような技術が少なくありません。それを防ぐのもまた技術ですが、いたちごっこは避けられません。そこで、私は、先端科学技術のシビリアンコントロールが必須であると考えます。自衛隊が専守防衛に徹するためにはシビリアンコントロールが必要なのと同様に、先端科学技術も平和利用に徹するためには、常にシビリアンコントロールが必須なのです。


とシリアスに主張している。非常に一般的ではあるが刺激的な文章だ。

妹尾先生、科学だけじゃなくて技術についても少し言及して欲しいです。

そしてそれらを述べる姿勢として全体に「粋」がかっている人間味。

秋葉原について興奮するものかと思っていたが、妹尾先生の人情味に対して興奮を覚えてしまった。中学校の頃ジャンプで「こち亀」の下町人情編の両津に対して持った感情と似ている。

そこにはロジカルに裏付けされた粋な正義感が読み取れるのである。個人的には研究者としてでなく教育者として尊敬したい。

セオリー通り、本書も最後にやっぱり「お金がない」と言って占めるのが面白いところでも残念なところでもあるのだが。

あと誤字はもう修正してあると思うが指摘しておく。
P.138 一行目
品格に欠けるマンションン業者に多いようですが