就活オワタ\(^o^)/? - 書評 - 就活の法則
タイムリーなので今書評しておくことにする。

良薬であるがゆえに口に苦い一冊だ。


というわけで買ってみた。自分のためになると同時に教育者は職業教育・キャリア教育という意識も念頭に置かなくてはならない。

そして本書はそういう視点からも会社分析のプロが書くだけあって非常に良著。ただ一点の違和感を除いて。来年就活する人はぜひ買うといい。

本書はコンサルタント波頭亮氏による学生の就活をいかにフェアに行うかの指南書。

そう、就活はアンフェアなのだ。そしてその先の会社というものは若者にとって相当アンフェアな空間である。それを会社を分析するプロがざっくり切った。

・就職支援の会社は転職者を餌に儲けているから会社と個人のミスマッチを望む。
・会社のHPには都合のいい情報しか書いてない。OB/OG訪問も都合のいい情報しか言わない。
・インターンシップは飾り建てられた芝居である。

本書が秀逸なのはそれだけではない。
キャリア教育って・・・何?
キャリアというのは就職先が決まったところで「終わる」にではなく、そこから「始まる」ものだからである。
二十歳そこそこで仕事を始めて、それをあと40年50年継続してゆくためのモチベーションはネットのリクルート情報などでは得ることができない。
仕事をするとはどういうことかについて徹底的に考え抜いて、現場で自分の仕事観の適切さを検証した人のたたずまいから学ぶしかない。


本書はこの部分のフォローまでをこなしているのだ。会社に入ってからどう振る舞うべきかまで含めての指南書である。これは就職関連書籍と言うよりキャリア教育書籍として並べて欲しいものだ。

データを示さず断言しているあたりに信憑性の問題などもあるが、語り方はロジカルでわかりやすく、信憑性を疑ってかかるならそれも思考の訓練として役立つのでありだろう。後は好みの問題だ。

しかし、問題が一点。本書P15より
自分の興味と資質を生かして働き、会社への貢献と自分の得る満足を最大限にできる仕事とは
1.自分がやりたいこと
2.自分ができること
3.会社で求められていること

の3つの要素が重なった仕事(会社)である。
(中略)

ところが昨今の多くの就活学生は、「自分がやりたいこと」についてはあれこれと憧れ、高い望みを持っているようだが、「自分の能力や資質を客観的に評価すること」については疎かにしている傾向があるように思える。


会社に対する切り方は絶妙なのだがココだけは惜しい。
id:umedamochio氏ウェブ時代をゆくの時にも感じた違和感であったがはっきりした。

若者は自分がやりたいことすら明確に把握していないのだ。
それが本当にやりたいこと?と問われてはっきりと心から答えることができる者はほんの一握りであるし、それができる若者はこのような本を手に取らない。


就職の際、まず好きって何?やりたいことって何?という自問自答から始まるのだ。好きとはなんだろう?条件づけられた体の反応だろうか?執着だろうか?本能とか欲の類だろうか?哲学や脳科学の分野を深く追求しない限りまだまだわからないものである。

それ以前に若者は選択肢が少ないことを大人は知らなければならない。
賢い若者ほど自分の世界の狭さを知っているし、活発な若者ほど他人と比べて自分より優れている人間なんて山ほどいることを知っている。それに若者は与えられた仕事はそれなりにこなせるという自信も無根拠にあるし、巡り合わせで適職に就いた等というドキュメンタリーも多く見せられてきた夢追い世代でもある。

好きを上手く語れないのも選択肢が少ないせいだ。
若者がなぜそれ(好きなこと)に熱中してきたかと問われて魅力を語ることはできても理由を語ることは無理であろう。自分の持っている「好き」に自信がないのだ。

会社も仕事も趣味も、選んだ理由を魅力から述べたって意味がない。
理由を語るには多くのものと比べてそのものの輪郭をはっきりしていくしかない。年を取って見下しながら語るのは簡単だろうが、若者が上を向いたままいろんな場所を模索することのなんと疲れることか。私も一度挫折した身なのでこの部分は大きく主張したいところだ。私の後輩も同じように悩んでいた。

これに対する答えは
「『好き』に執着するな、違和感を大事にしろ」である。
これは16才の教科書でも主張されているし、同様の主張がしてある汗をかかずにトップを奪えと本書との相性の良さは異常ではないかと思うほどだ。

これは好きなものだからこそ追求していくうちに違和感を感じることもできるため矛盾も生じない。

「好きを仕事にするな、違和感を仕事にしろ」は僕の職業観でもある。後輩達にも伝えていくし教え子達にも伝えていくつもりだ。