恩師から1年ほど前にもらった本。最初はビジネス書かと思ったのだが改めて本書のすごさを感じる。ただのビジネス書にしておくのがもったいないくらいだ。どこかの高校で教科書として使ってほしい。

「考え方から考え型へ」が最近お気に入りのフレーズなのだが、本書で紹介されるシステム思考という「考え型」こそ、学校で必要な教育である。エンターテイメントでなく断言したい。

はてなに登録して本気で世の中を上手く変えたいと思う人が多いことに気付く。ブクマネガコメ問題やなどもその一つであろう。しかし、その方法が妥当かを評価する意味でも本書を推薦したい。


そして本書と別の部分でなぜシステム思考が重要か、以下の流れで言及する。

1.マネジメント層の必要性と人材育成の充実
2.ループという考え型
3.学問の外と中
4.たりないのは変数
 本書はシステム思考を使った問題解決能力の育成・強化を示した本。
いや、このシステム思考の可能性は大きい。「システム思考」で検索すればいくらでも解説が出てくるのだが、ビジネスを中心にしたツールで収まっていることが非常にもったいない。

P193? 第8章 システム思考の効用と実践手法
1.「人や状況を責めない、自分を責めない」
2.視野を広げ、従来の「思考の境界」を乗り越えられる
3.無意識の前提を問い直すことができる
4.問題解決に役立つ時間軸を決めることができる
5.問題解決につながるコミュニケーションが可能に


その程度の効果で満足するつもりはない。著者こそいい意味で視野を広げるべきだ。
 後輩が言っていたが「欲を処理することがソリューション(問題解決)であるなら、人間の本質は問題解決だ」と。すなわち、システム思考は生き方にまで応用できるのだ。


1.マネジメント層の必要性と人材育成の充実
 問題解決の上でまず重要な事が、「規模を考えるということ」だ。
例えば1人の職人が10種類のものをつくれるとしよう。10人の客はその職人一人に自分の好きなものを頼めばよい。
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しかしこれが100人の職人と1000人の客という規模だったらどうだろうか。ほしいものをつくってくれる職人を探すのに大変手間取るのは予想がつくだろう。

しかし、間に調整役を入れ、需要と供給のマッチングを行うことで非常に効率的に需要と供給を満たすことができるのは容易にイメージできるだろうか。
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この調整役こそが"マネジメント層"であり、ビジネスでは流通企業や不動産などが代表的だ。

組織でも規模が大きくなるとマネジメント層による効率化が必要になる。
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社長と社員だけで成り立つわけではない、幹部や課長係長などマネジメント層による効率化が重要なのだ。

100人の集団と1億人の集団では効率的に活動するために必要なマネジメントの機能が違うのだ。 「学校の常識は世間の非常識」とよく言われるが集団の規模が違うため当たり前なのだ。問題なのは集団の規模によって効率的に動くことになれる訓練が十分に行われていないことだ。

生物の臓器も細胞数が増えるほど複雑化するし、建築の階段やエレベータも階数の規模が増えると昇降を効率化するために必要になる。法律も問題の数の規模が増えるからこそ制定する。これらは皆マネジメントという視点からできたものなのである。


2.ループという考え型
 では、マネジメントとはなんだろうか。これは管理(Control)と最適化(optimize)である。

大人について
一番大事なのは運営側が多様性を認め致命的な失敗をさせないこと。


例えばこれが運営者にとってのマネジメントである。多様性を認め(optimize)、致命的な失敗をさせない(control)こと。
なお、最適化とは二つ以上の視点や変数から一番よい妥協点を取る行為である。また管理は指針であるべきで規制することではない。

なぜか。ものごとはループするからである。
簡単に言うと「自分がされて嫌なことは人にするな」とか「自分がしてほしいことを人にしろ」とかそういう話でもいい。
近年の厳罰化等を見てもわかると思うが、不適切な規制をすれば反発も増え、それ以外の事件が増加し、経済的損失とか別の分野で問題が起きる。
一つの変数が減ると他も増えたり減ったりする。関連づけられる。

これがループという思考だ。
本書ではこれをループ図にあらわして説明している。ビジュアルでも直感的に理解できるし何が問題かが瞬時に判断できるからである。

しかし、システム思考を学ぶこと=ループ図が書けることではない。頭の中で何がループしており、何をどう最適化したいかを判断することこそマネジメントの視点だ。ループ図はそのための方法にすぎない。

またロジカルシンキングやクリティカルシンキングも並列に並べられるが、システム思考の中にはこれらも含まれている。

ロジカルシンキングで有名なのは3弾論法だ。
「A=Bである、B=Cである。だからA=Cである。」
ネット上でさんざん三段論法が妥当性が低いと議論されてきたが、
これが妥当かどうかはループしているかどうかによる。

同様に「前提を疑え」というクリティカルシンキングも、ループの変数が固定さているかどうか、一歩引いて考えればわかるものである。

3.学問の外と中
 よく技術的問題を技術で解決しようとする人がいる。

■問題解決という「問題」では問題の捉え方次第で、
問題というものは、視野・視座・視点によって違ってくるものだ。同じ状況の中でも何を問題と捉えるかで、問題設定と、したがって問題解決そのものが異なってくるわけだ。


技術的問題を社会との関わり合いで解決するか、技術そのもので解決するか。
これを僕は学問の外側と内側といっている。
技術者であれば技術を追求して技術的問題を解決すればよいし、技術はそのままで妥当なつきあい方が提案されればそれを浸透させればいい。
「どちらがいい」ではない、「どちらもいい」しうまくいくようなら組み合わせればいいのだ。

よって技術者が技術を追求することも必要であるし、法律家が上手なつきあい方を提示することも必要だ。しかし、外と中のバランスを取ることが一番重要である。そのためのシステム思考でありマネジメント層である。

モラル低下が叫ばれているが、これは教育のせいでも社会のせいでも偏向報道のせいでもある。
もし若者のモラルがたりていないと言うのなら、このシステム思考の訓練がなされていないからではないだろうか。頭の中できちんとしたループが作られていれば、だれも犯罪は起こさないし、だれも起きた犯罪を大声で批難しないだろう。学校で学ぶ学問はこのための変数であるが、教科内容が学問の中に偏っていることもたびたび指摘されるのだ。


4.たりないのは変数
 そう、システム思考は「考え型」であって「考え方」ではない。
-2日で人生が変わる「箱」の法則-でも思ったのだが、何が嫌で何が嬉しいのか、
これらの変数や視点は体験せねば、学ばなければ身につかない。

BLOGOSPHERE時代はWEBでデータだけではなく簡単に生の、多くの視点を得ることができる。教師が行うべきは型を教え、生活や人生の中で変数を集めさせることだ。問題が上手に解決できれば、例えば充実した生活が送れる可能性は高いだろう。

なお、比較のためにもう一冊システム思考の本を買ったのでまた別エントリーで紹介する。