学生諸君。とにかく騙されたと思って学生生協どこ成りで買えばいい。
線形代数学の単位を落とし続けたぼくが一ヶ月で意味を理解し計算ができるようになった参考書を紹介する。

多次元の行列がわかるようになるには2次正方行列と3次正方行列とに代入してひたすら解くしかないと言われていたが、本書はそれを踏まえた上でひと味違う、というのもビジュアルによる解説や重要性をきちんと示してくれているからだ。


本書は最強の予備校講師の一人である斉藤寛靖による線形代数学の参考書である。教科書と併用して初めてわかるのだが、正直この一冊を読むだけでも線形代数の講義半期分の価値はある。

ぼくは線形代数の教科書を5冊持っているがまったく持って線形代数学の有用性というものが理解できなかった。しかし本書でわかったのだ。「線形代数はすごい!!」

簡単に言えばいわゆる連立方程式を簡単に解く方法の一つなのだ。だがそれが同時に幾何から統計、物理まで幅広い分野に応用できることが発見された。現代では他の数学の分野と掛け合わせて更に発達した利用がされていることだろう。

3次元以上の図形なんて書けないのになんで4次元以上の計算をやるのか。

簡単だ、世の中が方程式より複雑にできているからだ。解法を知ることで見えてくる事があるのだ。単位のために学ぶのはもったいない。せっかく学ぶのなら仕事でなく自分の人生に役立つような思考法として学びたい。

逆に言えば多くの教科書はこの「なんの役に立つのか」という視点のバランスが悪い。

学校で学ぶべきはこれだろ、常考 書評-なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?-
技術的問題を社会との関わり合いで解決するか、技術そのもので解決するか。
これを僕は学問の外側と内側といっている。

数学もある種の技術であると考えれば、この内側ばかりを追い求め、外側への言及が少ない事こそが現代の数学の教科書の難点である。

もちろん言及してはいるだろう。が、それでなんの役に立つのか答えられる学生のなんと少ないことか。

素数一つとっても暗号化技術など非常に重要な役割を担っているのに、教科書をはじめ多くの数学書しかり「本当はすごい数学たち」は学問の中から語られることが多い。

「学問は分析のためのツールで価値判断は含まない」と多くの学者が指摘するがそれであれば教育に用いてはいけない。

教育とは逆である。視点を与えず純粋に学問の能力をつけることではない。学問を通して多くの視点を与えることなのだ。教科書に載っていることは実はすべて「すごい事」なのに、教師の教材研究に任せて、多くの教科書はその価値を語らない。

それらの調整役である参考書というツールは現代に必要不可欠になっていると言うことが悲しい。