良くも悪くも、売れる本だな、と思った。

本書はジャーナリスト鈴木 隆祐氏による中学校の紹介とその特色ある授業事例を紹介する本。

売れる本だなと思ったと言うのも、良くも悪くも「紹介」にとどまってしまっているところが非常にもったいないと感じたからである。

著者の教育に対する目の付け所は非常に本質を突いている。老年で印象論でもんだいを語り精神論ばかりを説く自称「教育評論家」たちより数倍好感が持てる。例えば
ともかく長い間、まず進学実績を積み上げてクリエイティビティーを求める学校創りが主流だった。所が最近、それを同時に、あるいはまずクリエイティビティー重視の体制を優先して、エクセレント校化を図っていく中高が増えてきた。これからは、大学受験の先に真価を発揮する実力人の養成こそが問われるからだ。
と、進学校だからこその人間性の教育を主張する。一般論からすれば普通かもしれないが、意外と通念化されていない。

また教育内容も性質的な部分と社会的な部分のバランスを見て書いてある事に感動した。各学校をきちんと足を運んで取材し、授業事例を挙げ、各教科の本質を突いた部分をちゃんと褒めている。が、これが本書の長所でもあり短所でもあるかなと言う印象。

全ての学校に置いてメリットばかりが強調され、デメリットとなる部分や弱い部分が少ない。学者でないから仕方ないかもしれないが、「この学校はこの点が弱点で、ここを改善することで更にいい学校となるだろう」という部分まで読みたかった。多くの学校の協力の下で出版しているから確かに仕方ないのかもしれない。

また紹介している学校の数も36校である。1つの学校に咲かれるページ数は5ページ程度。途中でなかなかお腹いっぱいになってしまい、ページが進まなかった。別の書籍で補完的に出すというのであれば、もっと省いて1校1校を深めて紹介してくれてもよかったのではと思ってしまった。
もちろん保護者からすれば進学は関心事であり、多くの学校が紹介してある方が比較できていいだろう。中高一貫校という目の付け所も面白い。

そういう意味で売れる本ではあるが、買ってよかったという所までは行かなかった。補完とする書籍に期待したい。

とは言ってもみんなの関心事であろう校風からOBOG、学校の様子や進学率、経緯なども客観的に書いてあり、俯瞰的に見る分には十分有用である。

また合わせて東大進学率の資料も見ておきたい。

巻末の学校のリンクを全て張り出そうと試みたが2校で疲れてしまったので、よければ公立中学でも特色のある授業を行っている学校を紹介したい。

例えば青森の八戸第三中学校。中学校におけるロボコンの実践では常に最先端を行き、その実践は「ロボコンスーパー中学校―八戸三中の熱闘」として書籍化されているし、試みは一部で広まりつつある。

また米沢市立南原中学校は教育プログラムとして3年間の起業家体験プログラムを行っており起業家教育の実践(pdf)で最先端である。アントレプレナーシップである。

また、三重県の松阪市立飯南中学校ではアンプラグドコンピュータサイエンスといって、コンピュータを使わないコンピュータの授業を行っている。こちらもすでに「コンピュータを使わない情報教育アンプラグドコンピュータサイエンス」として書籍化されている。

公立校教育不信が続く中で、私が現時点で出来ることは現場で頑張っておられる先生とその実践を知ってもらう事だけだと思う。

また、これらの実践がうまくいっているのは教師が腕があるわけではなく、教育者達がコネクションを結び、保護者も含め協力しているからこそであることも主張しておきたい。

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