丁寧にロジカルに"学ぶ"とは何かを説いた本。

ロジカル過ぎてわかりやすいのはいいが、データなどはほとんど示されていないため、そういうのが好きな人には物足りないかも。

筆者から読み取れる主張は「"学び"万能説」である。

自分も物足りなかったので復習もかねて要約と自分の意見を書き出してみたい。

「○○力」シリーズでおなじみ齋藤孝氏の"学び"について論理的に分析しまとめた本である。事前に一ヶ月200冊本を読むと言っていたのでどれだけ面白い本かと期待しすぎたのが悪かったのかもしれないが、仮説力同様普通に楽しめる一冊である。

◎はじめに
「学び=祝祭」である。
→学びがそれだけ重要であると言う話。ただ、それあ教養として重要なのか生きる糧として重要なのかは触れてはいない。もちろん両者は地続きである。

 本書は五章構成。中身も至ってシンプルである。
一章ではなぜ学びが必要なのかを説く
二章では学びとは具体的に何かを説く
三章ではその学び力はどうすれば着くかを説く
四章では学び力の具体的な効用について
五章ではそれらが日本を救うという「学び万能説」
である。

◎一章「今必要なのは学び力」
著者にとっての学ぶこととは「新しい世界に出会って自分の中に新しい体験が生まれてくること」である。
なお心理学で言う「学習」は新しい知識や刺激を受け取ることで行動が変わることを指す。遠からず近からずであるが、最終的に言いたいことは一緒である。本書では表現は厳密さよりわかりやすさに重きを置いている印象を受けた。

・まじめな学ぼうという姿勢(勤勉)は日本人の国民性。それが現代では薄れてきた
→個人的にはそれがどれだけのデータに基づいて主張しているかを見たかった。主観でなくどれだけ客観的であるかが重要であり、実はこの類の主張は僕の知っている中では戦中からある。

・成果主義は「教えるシステム」を壊した。学ぶ力がないと不利。たとえば東大生は知識以上に学ぶ力や姿勢がある。
→これは賛成だが、社会に順応するよりシステムを変えることを主張してほしいと思ってしまったのは高望みだろうか。成長曲線の傾斜が違うというのは納得する。もちろん個人差はあるだろうけど。

◎二章「学び力とは何か」
・学びのイメージは狩猟である。
・学校で身につけるべきは上達のプロセスである。
・感動と習熟が学びの両輪である。
→これはなるほどと思った。学ぶことは感じること。学ぶことは新たな知識を生み出すこと。この二つが合って成り立つのだ。よく学びとは何かについて議論されるが、どちらが正しいでなくどちらもあるからこそ学びなのだなと言う印象である。


○学び力には5つある。
1.自己認識力
2.全体把握力
3.視点移動力
4.共有力
5.概念化力

○自己認識力
・自分についてよく知るための力。何を知って何を知らないかを明確にすることが学ぶと言うこと。
→そして知らない知識を埋めるという行為を伴って初めて学びとなる。自分が何が足りないかを知ることは重要であるがなかなかわからないものである。

○全体把握力
・「他社から何を望まれているか」を素早く捉える能力。仕事をうまくこなすのに必要不可欠な力。
 たとえばグラフィックデザイナーは自分の好きに書くのでなくクライアントの意図したものを自分のできる範囲で作るからこそ仕事になる。

○視点移動力
・視点移動ができないと他社を理解することも叶わない。視点の移動は発想の転換という形で現れる。
・先入見から抜け出した過程、方法を学ぶことこそが勉強です。

○共有力
・学ぶと言うことには、他社と認識を共有していくことが本質的に含まれる。
・優れた師は、常に「対話」をする。
→この説明は本書の中で一番重要だと感じたのだがセンテンスが非常に短い。
教壇に立つ身としてこれは「対話する」ということを思い出させてくれた。
そう、学びとは教授ではない、共有なのだ

○概念化力
・知識や体験を「自分の型」に加工して所有する力。
→いわゆるメタ化、メタ認知はもちろん一番重要であり大学で一番学んだ収穫であるが、むやみやたらに概念化し結論を急ぐのは自分の可能性を狭める。
たとえば「花はいつか枯れる」という知識を概念化し自分に当てはめると「自分はいつか朽ちる」となる、いわゆる盛者必衰であるが、現代の若者はだからと理由をつけて刹那主義に走りがちに見えるのは気のせいだろうか。
花には「返り咲き」や「遅咲き」などの概念もあり、もしくは「実を結ぶ」「種をまく」など繰り返すタイプの概念も出てくる。
概念化を進めるだけでなく、偏った概念化を是正するのが教育という仕事である。

◎三章「知識を論理に、そして実践力へ移す技」
・武道と同様、構えを作り、鍛錬を積み重ね工夫を考え、自分の得意の型を積み重ねていく。
→これはどの自己啓発本にでもよく出てくるながれであるが、確かに重要である。足し算をずっと繰り返し練習しているとふと、かけ算の法則にであう。そんなはなしである。

・学びのスイッチを用意する
→これはあまり賛同できない、と言うのも汗をかかずにトップを奪えでは、日本人は元々農耕民族であるため、スイッチのオンオフよりハイローの方が合う、という仮説を唱えているからだ。こちらの方が面白い仮説である。

・その他tips
→これは本書のキモの部分なので書く気はない

◎第四章「学び力が作り出す、勝負強さと戦略的思考」
・魔法のごときひらめきは、じつは学びの蓄積から生じる
・学んできた人には先が見える
・学びはある程度のボリュームを蓄積してこそ、初めて意味をなす
・音読するのが一番よい
→これは確かに理解は深まるかもしれないが、逆に速読の妨げになる。どちらがよいかは人による

◎第五章「そして学ぶ喜びへ」
・学ぶことによって得てきたものは自由
リベラルアーツの考え方である。

・学びは鬱を解消する
・大局観を養う学びが日本人を救う
前に読んだ本と結論が一緒だったので少し面白かった。しかしそれだけ重要であると言うことである。

◎まとめ
全体的に足場が不安定であり、それはデータや引用、出典に非常に乏しいためである。わかりやすさを重視したのはいいがもったいない。著者が本当に書きたかった本か、少し疑問である。しかし著者の俯瞰性、大局観は素晴らしいものがあり、最後にいくつか参考図書も載っている。なにより教育に携わる自分に大事なことを思い出させてくれたことは非常に有意義であった。
学び万能説は否定しない。ただ、時代に合わせるためにという姿勢はもったいないと感じた。

なお、読み物としては汗をかかずにトップを奪え個性を捨てろ!型にはまれ!をセットで読んだ方が面白いしためになるだろう。