4年ぶりに読み直したが、また新たな視点を得ることができたあたり非常に良著。
知る人ぞ知る一部教育者のバイブル。読みなおして数日たったが非常に書評が難しい。


学習が必要のないのが大人だとしたら世間に大人はいない - BUILDING AND DEBUG ERROR
大人も子どもも(世間的な)間違いを起こす存在であることは変わりません。むしろ凝り固まった思考や忙しさによって世間に対する適応力(適応する時間)が少ない分大人の方がタチが悪いのかもしれません。子どもであれ大人であれ自分の行動に責任は生じますし、「知らなかった」で済むのも範囲は違えど限界はあります。子どもといわれると反射的に不快感を示す方もおられますが、大人も子どもも地続きで本質的には同じものだと思っています。


すなわち子供が動く原則は人が動く原則である。

本書はTOSSでおなじみ向山洋一氏による教育技術の入門書。

TOSS自体は"水からの伝言"を教育内容として採用してしまったためその理念などは今なお賛否両論状態であるが、その教育技術自体は非常に有効である。

本書で一番おもしろみを感じたのは、教師を上司に読み替えても十分通じる内容であることだ。たいがい他所でネタバレもしているので本BLOGでも書いておこう。

本書P15
子供を動かす法則は何か?それは、ただ一つである。

"最後の行動まで示してから、子供を動かせ"

これは非常にシンプルながら奥深い。

まず最後の行動を示すためには、最後まで流れを把握し、学習をデザインしなければならない。イベントドリブンでの対応は動く側も動かす側も、能力のある者でなければむずかしい。

つぎに行動を示すための、指示の仕方がある。

これについても、1.端的に、2.どれだけ、3.終わったら次に何をするのかを示し最後に質問を受け付けるよう示している。

僕の場合はこれを講演会や発表を見るときの指標として用いているのだが、最初に本日の流れをわかりやすく示しているかと最後の質疑の時間をとっているか、もしくは議論の余地のある発表を行っているかは重要なポイントだ。

引っかかりや違和感のない発表は思いこみか神様の声かのどちらかであろう。

本書に登場する普通の教師が1年かけてじっくり指導する内容を5分で指導してしまう理路整然とした発想と実践技術はまさに神業であろう。

向山氏は教育法則化のキリストとして本書で現代の教師のあり方を今日しながらに叱咤激励しつくすのだが、その部分だけは違和感ばりばりである。

良著だからこそ指摘しておかなければならない。

1点目はそのスタンスである。

本書では何度か"権威"という言葉が出てくる。本書が初版として出たのは1987年、およそ20年前であり、当時はまだ「HOW TO 権威」本が主流であった。

現代に照らし合わせるともっと広義な「HOW TO 信頼」であるべきだ。それは子供たちが怒る怒らないを行動の絶対的な基準に据えないことを意識するものである。向山氏は十分に気づいていると思うしこの表記の多くは文脈によるものだろう。が未だに教育者の指導力のベースは権威であると思っている者は少なくない。どちらかというとそういう人たちを増やしてほしくないという指摘である。

二つ目はいじめについて「いじめは100%教師の責任である」というスタンス。これについては個人的に異論がある。と言うのも、いじめは教育機会である。

人間関係によるぶつかり合いが成長を生む。大事なのは予防ではない、フォローだ。必要以上にいじめ(というか人間的ぶつかり合い全般)を敵視すると、隠蔽だの責任逃れだのと発見を遅らせる原因になる。

この指摘の本質は教師の思い上がりを戒めなければならないというものだ。本書の持ち味の一つである追記にそれらの意図が現代的視点を踏まえて書いてある。そこでまた新たな視野が開ける内容となっている。

教師は皆カーネギーの「人を動かす」を読めとする向山氏の指摘など、本書は教育者以外が読んでも刺激があふれている。2章構成でビジネスマンであれば1章を読んでおけばいろいろ応用もできるだろうと思う。1エントリーで語りきれないのでまた気が向いたときに別の視点で書きたい一冊である。