オリンピックイヤー、様々なニュースが連日飛び交っている。

北島選手が、水着でなくそれを着て泳いでいる選手を見てほしいと言っていたが、それだけでは正解ではない気がしていた。

なぜならスポーツ分野において、新たな技術に挑戦し実現してきた職人たちを抜きにしては語れない部分があるためである。


本書はルポライター永峰英太郎氏によるスポーツ選手を裏で支える道具職人たちを紹介したもの。新聞に載るような形式で簡易にまとめられたルポは非常にわかりやすく読みやすい。

この手の本はだいたい内容が同じで途中で読み飽きるのだが、このすらっと読める感は、こちらもある意味職人技である。

松井やイチローのバットを作る職人、副題通り藍ちゃんのゴルフクラブや上村愛子のスキー板や愛ちゃんの卓球ラケットを作る職人も登場する。



本書で一貫して語られるのは"選手は何が正しいかわからない"ということ。

どこか既視感のあるような話なのだが、なにより繰り返されるのはそれが真理であり重要であるからだ。

エンジニアだろうとマイスターだろうとものづくりをするクリエイターは常に使い手の気持ちと使い手の知らない感覚を大切にしながらものをつくる。

それがユーザビリティとアーキテクチャに表れる、とでもたとえればよいだろうか、結果、完成品の細部には魂が宿る。

本書の面白いところは、ものづくりの職人だけでなく、甲子園のグランドキーパーにまで話が及んでいるところ。

一塁二塁間の土を硬くしている。砂の割合を季節ごとに変えるなどのこだわりの話から、技術をどう継承するかという人材育成の話まで、ツボを押さえてコンパクトにまとめてある。

今年はオリンピックイヤーである。
本書はオリンピックの楽しみ方を2倍にする。本書を読み終えたあと、選手だけでなく、日本の職人がどれだけ活躍するかにまで注目が及んでしまうからである。