戸田恵梨香よりむしろPerfumeの踊りの方がきつい
Perfumeのダンスはなぜ物足りないか
これはいい考察!
私が期待していたのはそのような意見ではありません
つまりまとめると、

ほとんど静止するということがない
リズムが感じられない
緩急がない
手足に神経が行き届いていない
というところですね。ええっと、私が期待していたのは、「ここのこういう振りが難しいように見えて簡単」だとか、そういうダンスについての技術的詳細なのですが……。このような抽象的かつ精神論的な意見だけでは納得しかねるものがあります。



僕自身もダンスインストラクター・イベンターをして多くのダンサーを見てきました。その歴史的な観点から見てみればわかるのではないかと思います。
 結論から言うと彼女たちのダンスは系統的な価値観を踏襲しているし、振り付けは簡単だけど技術的にはすごいものを持っているよというお話です。
 あまりジャンルやアーティストなどの固有名詞を出すとごちゃごちゃするのでこれでも控えめに書きました。
1.ダンスにも色々あるよね
 クラッシックバレエ、クラシックジャズなんかの歴史は僕が知ってるだけでも400年あって、クラシック、モダン、コンテンポラリーと時代を追うごとにハイブリットに(ジャンルの垣根が無くなっては混ざって新しいものができるを繰り返して)進化しています。
それらは舞台のカルチャーとストリートのカルチャーと呼ばれ、今から40年ほど前、ニューヨークのシアターの隣でバレエやジャズを習うことができない黒人たちが始めたのがストリートダンスだと言われています。
 要はリズムを重視するダンスの起源です。系統性のあるリズムダンスの起源はまだ50年立っていないのではないかというのが僕の見方です。しかしその頃僕は生きていなかったので詳細は不明です。
 見よう見まねで基礎がないため筋肉は固く、ジャズダンサーやバレエダンサーのように踊れなかったから今のディテールになったと言われています。

2.オールドスクールからミドルスクール、ニュースクールへ
 日本のストリートダンスシーンは世界でも非常に特殊なジャンルの分類をすると言われています。
 映画「ブレイクダンス」や「フラッシュダンス」それからフラッシュダンスの時代をオールドスクールと言い、映像で紹介されていたようなlockin'(TONYTEE),POPPIN(マイケルジャクソン),BREAKIN'(ブレイクダンス)と呼ばれるダンスが流行り始めました。
これまではディテール、静止、緩急など、音楽と物理的な要素が重要視されていました。
 ミドルスクールと呼ばれるのはMCハマーやダンス甲子園の時代。ニュージャックスウィング、ホーシング、ハマーダンスなど。HOUSEダンスと言ってTRFのSAMが踊るようなリズムに乗って止まらず流れるような動きを重視するダンスもこの頃から出てきました。
 それから1992を境にニュースクールと呼ばれるダンスが出てきたと言われています。HIPHOPと呼ばれていたリズムダンスにPOPPIN'を取り入れたアニメーションヒップホップ、系統的なジャズダンスをHIPHOP風にアレンジして踊るクラブジャズなどが流行。
 2000年頃からレゲエHIPHOP,テクノ系ブレイクビーツ、サイケ、サウスHIPHOPなどの音楽とともにさらに違った風貌を見せることとなります。
 
3.音楽の主流がアフタービートへ
 ストリートカルチャーを中心に書いていますが、忘れてはいけないのが音楽との関わり。
 ハウスダンスのブームの裏にはTRFの様なRAVEブームがあるように、音楽性の変化が80年代以降著しく変わってきました。
 4拍子で数えるとわかるのですが、僕らは音楽に対して1,2,3,4,と拍子を取ります。ダンスの世界ではその間に1、エン、2、エン、3、エン、4、エンというエンカウントと呼ばれれる半カウントずれた音取りがあります。
 音楽のビートがドンッドンッ、またはシンバルなどのチキチキ、という単調なビート(風見しんごとか)から、ズンチャズンチャと4拍子から半カウント遅れて強いビートが入る「アフタービート」が浸透してきたことで、ダンスの大事にされてきた価値観が変化を見せます。
 それまでこの手のリズムは和田アキ子近辺のソウルミュージックでしか聞くことができなかったのですが、宇多田ヒカルのヒットにより一気に浸透しました。
 それによりJAZZHIPHOPやLAスタイルJAZZと呼ばれる「スタイル系」と呼ばれるダンスがメジャーに増えてきました。

4.ミュージックからサウンドへ
 90年代後半、「音ハメ」という概念が誕生します。ブレイクビーツなどに電子音楽が融合したため、それまでのループミュージックから「不確定なビート」が主流になってきます。それまでも「音楽に合ってる」ダンスというのはあったのですが、不確定なビート、つまりサウンド一つ一つにあわせることをメインにおいたダンスが明確に誕生したのはこの頃だと記憶しています。

そもそも音とダンサーの関係において
1.音を空間やBGMとして表現する
2.音に乗る、音と一体化する
3.自分が楽器のように音を奏でる
と時代を追って関係が変わってきました。
 1はクラッシックバレエなどの古くからある価値観、2はブロックパーティやディスコなどクラブダンスが生まれたあたりからの価値観。
 そして音ハメなどに代表されるダンサーが音を奏でるようなダンスを良しとする風潮が3です。

 これによりメジャーアーティストやそのバックダンサーたちの振り付けもリズムに乗れているかよりも一つ一つの音をどれだけインパクトを用いて表現しているかという流れに変わりました。「スタイル系」と「音ハメ」をいち早く取り入れた安室奈美恵なんかの振り付けなんかがそれに当てはまります。
 また技術的には胸や腰でリズムを取っていたのが手先や頭、足の先など末端で音を取る振り付けが流行。同時にクランプというムーブメントが05年頃から起きたためにEXILEや倖田來未など、全身を使うスタイルのダンスも一方で見直されることとなります。
 

5.エモーショナル、リズミカル(グルーヴ)の時代から、コンセプショナル、ハイブリッドの時代へ
 21世紀に入り次に変わったことは、コンテンポラリーダンスと呼ばれる前衛的なダンスがストリートシーンや振り付けの世界にも入ってきたことです。
 一言で表せば「音を取る」から「音を表現する」というイデオロギーが発生したわけです。
 これを機にストーリー性を重視したダンス、コンセプトやテーマを重視したダンスなどがどんどんとリズムダンスの世界に見受けられるようになって来ました。鬼束ちひろや中谷美紀の「幻想的」、大塚愛や及川光博などの「アイドル的」などテーマごとに振り付けの質が明確に変わってきました。
 
6.perfumeの話
 結論から言うと、そういう価値観で見てみれば、彼女たちは、「アイドル」「テクノ(ロボット)的」「人形」などのコンセプトに基づき、"ミュージック"でなく"サウンド"を重視した振り付けになっています。
 昔からのグルーヴ(リズム)や静止はあえて取り入れず、音取りはビートなどの低音だけでなくピアノの音などの高音まで含めた「音ハメ」的で、静止は「被写体的」静止を繰り返すこと、動きは昔からあるパペットというパペット人形をまねたスタイルを進化させています。

7.perfumeの技術
 彼女たちはダンス歴も長く、技術的に見ても高いものを持っています。先ほどのパペットという技術も、肘やヒザから体を動かすひつようがあり、またゆっくりでシンプルな振り付けほど軸のぶれなどが目立ちます。これは素人目でも確認できますので見てみてください。
 また彼女たちはビートに合わせてわざとブレをつくっています。低音にあわせて動きを止めるときの肩を見るだけでも一目瞭然です。
 試しに肩をすぼめて力強く落としてください。肩POPと言ってマイケルジャクソンもよくやる音取りです。本当は首と胸で音を取るのが正しいやり方です。なぜなら腕を肩より上に上げると肩を強く落とせないからです。(試しに万歳してやってみてください)
 これはPOPダンサーの間では間違った手法だったのですが、これを破ったのが前述のニュースクールのアニメーションヒップホップと呼ばれるジャンルです。これによりヒップホップ、それから振り付けの質が大きく変わりました。
 緩急一つとってもこれだけ細かい技術的な動きをしていますが、ぱっと見経験者でなければわからない部分でもあります。
 それらの歴史を踏まえた上で自分たちのコンセプトに基づいた振り付けをperfumeがこなしていることを知ってほしいなと思ってエントリーを書きました。

8.補足
 ちなみにパラパラなどのダンスとはまた別の(そして隣接した)質のダンスです。ディスコダンスやゴーゴーダンス、ピンクレディーなどに起源を欲するアイドルダンスなどアートでない大衆向けのものはダンスの「コミュニティ性」と言う視点から語り直せば出てきます。

 新しくでてきた価値観を踏襲せず自分の価値観でダンスを語るのは何となく俗流若者論的だなという印象を受けました。一般の方に限らず古くからダンスをされている方もこういう語りをしますし、それ若者にはが非常に懐古主義的に映ります。しかも体育会系なため、大声で「お前らは間違っている」と若手に語る人も少なくありません。非常にカルチャーファースト的な印象を受けてしまいます。
 細かく書いていくと50項目くらいになっていまいますので今回はこれくらいで。

続編記事:perfume/ワンルーム・ディスコPV ダンスの解説とか