先日、初めて主催した中学生向けのロボットコンテストが無事終了した。

 競技ルールや運営など、大幅に中学生に権限を与え、自分たちのイベントと意識して取り組むこと・ロボットだけでなく祭りをつくることをコンセプトとし、当日まで準備不足や打ち合わせ不足の状況であったが、盛大に盛り上がる大会となった。

 一方で教員の負担や廃材の量、イベントの円滑な運営など課題点・反省点は多々見つかった。改善すべくロボットコンテストの意義などを問い直さなければと考えていたとき本書に出会った。


本書は立命館小学校教頭、荒木貴之氏による小学校においてロボット製作の授業を導入した実践報告を行った一冊。全国的にも話題の取り組みらしく、WEBで少し散見しただけでもいくつかの記事が発見できた。

  • 授業紹介 第5回「サイエンスがもっと好きになるーロボティクス科」 教諭 荒木貴之
  • Microsoft Education:NEXT プロジェクト - 公開授業報告 : 立命館小学校で UMPC 活用学習の公開授業
  • 最新IT機器の教室への設置により子ども達が集中できる授業を実現。立命館小学校殿
  • 子どもの知的好奇心や創造性を高めるロボティクス
  • 京都学校物語(5)企業参加、ロボット授業──本物に触れ「創作」発見
  • Go! Go! インタビュー 立命館小学校 教頭 荒木貴之先生


     ロボット製作の授業は大学や高専のロボコンから始まり、今や高校や小中学校など、発達段階を問わず全国的に広がっている。特に中学校段階のロボット製作学習の発展はめざましく、全国でわかっているだけでもおよそ2500校が行っており、一部の説では12000校という話もある。また小学校での製作実践も報告が増えており、本書もその部分を立命館の独自の教育と絡めて丁寧かつコンパクトにまとめている。

     しかし、ここで一つの矛盾が生じる。技術とは、ユーザビリティ設計の観点から、「知らなくても扱えるもの」として設計が徹底され普及しているはずだ。例えばHTMLを知らなくてもブログがかけるように。例えばプログラミングがわからなくてもATMでお金が引き出せるように。ロボットもどうようであり、最近では無人で働くタイプのロボットの研究も当たり前に行われている。

    であればなぜロボットを教材として用いる必要があるのか?

    明確な部分で3点はあげられる。
     1点目は話題性。知識だけでもかなりの広がりを持ち、学ぶ内容も単なる科学や情報の知識だけにとどまらない。
     例えば日本はロボット大国であり、全世界に工業ロボットを輸出している事から日本の世界における役割を再発見できること。複合教材として全教科の要素を横断知として統合する必要があること。イベントとして成果発表会を設け地域に開放することで祭りとしての機能を持つこと。少子高齢化社会への課題解決として高齢者向けロボットの開発などが現在ホットトピックになっていること。ロボットが増えることで人の仕事が無くなり雇用や収入が減ってしまう可能性があることなど技術の負の面を知ることができるなど、その話題性は探しても探してもつきることはないだろう。
     2点目はキャリア教育の観点から。ロボット製作学習で用いられている形式のほとんどがチームプロジェクト型である。これは職場に行かない職業体験として、会社でどのような開発工程を踏むかを体験することができる。
     3点目は本書に書いてある、ロボット製作学習の導入に関するQ&Aより
     教師は、専門家ではないので、ある一定の知識の伝達者にしかなり得ません。にもかかわらず、教師は、自分一人の力で授業を行おうとする傾向が強いものです。
     それが、連携授業という形で、モノやヒトの助けを得て、子どもたちの理解をさらに深めることができた。それは、子どもたちにとっても好結果をもたらすし、教師にとっても力量形成という点で効果があります。

     たとえ初めての試みであっても、スタートから全力投球してください。教師は子どもたちにとって、身近な大人のモデルです。教師の一生懸命な姿を子どもたちに示すことには教育的な意義があります。

    と、教師側にとってのメリットがあるというのが大きく、その点に触れている本書もそこに書かれている実践も非常に信頼性の高いモノとなっているように感じる。

     生徒にとっても教師にとっても、知識を知識で終わらせないために、このような創造的な活動を授業に取り込む事はもっと声高に叫ばれるべきなのだが、一方で公立中学校では予算の問題からも大々的に導入することは難しい現状となっている。一部の力ある教師や研究モデル校などの特別予算が降りる学校や私学が工夫をしてやっとこなしている状況では意味がない。教育手法だけでなく、教育行政のあり方も変える力をロボットが持てるようこれから働きかけていきたいと思う。