半年ほど発売が延期してついこの間手に入れた。

著者の人格や言論を否定するわけでもないけれど、本書を学級文庫におこうという気にはなれなかった。

数週間前によんだわりに感想がまとまらない。


それにしても、ろくな書評がねえなぁ!!
などと毒づいてみたくなるくらいみんな本書の購読層について、子どもの視点で書かれたものが見あたらなかった。みんな宮台真司に感染している。


 本書はソーシャルデザイナーを自負する社会学者宮台真司による中高生向けに社会学を語る本。

 そのメッセージはといえば、宮台言説になれていない一般の人から見ると首をかしげるようなものばかりで、第3章一つとっても「ゲームとかのせいでバーチャル恋愛ができるようになって世の中が変わったせいで恋愛観が変わった(P63)。恋愛感情って複素数みたいなもの(P80)。俺は昔常時5人の女の子と付き合い、100人切りした(P86)。」とか、非常に刺激的。

 全体を通して学説とか言説をもちいて自分を正当化する「壮大な自分語り」に終始している印象しか受け取れなかった。「100人と寝たけど、世の中が悪い!」と受け取ってしまったのは自分がひねているからだろうか。ほかにも「階級社会にしよう、少なくともエリートがルールを作る必要がある(P44)」など危ない言説が飛び交いまくる一冊だ。


 僕は宮台真司氏が嫌いなわけでもこの人の学説にそんなに詳しいわけでもない。しかし、この本は今までの本たちと違って引っかかるのだ。

 しかもタイトルの「社会学」に引っかかるのではなく「14歳からの」に。14歳と言えば中2?中3になる年だ。かの「酒鬼薔薇聖人」を意識してつけたのだと読み取れる。14歳には「コミットメント」も「複素数」も「チョムスキー」もわからないのだが(大人でもわからないし)、それ以上にこの本を読んで一番考えるべき対象がちがうなと思った。書いてある内容から言っても、14歳の子どもを持つ親や教師、それから子どもたちに触れる社会こそが、この本を共通前提として読まなければ効果はないのではないか。

 子どもたちが昔とは確実に変わった世の中で生きていく。本書の言葉を借りれば「共通前提のない社会」であり、それは確かに意識すべきだし、それを宮台はこう解釈した。だから子どもたちにこう伝えようというインタラクションこそが必要なのだ。宮台氏も言いたいことはたくさんあってそれをかいつまんでこの体裁にしたのは読み取れる。でも、それを子どもたちに直接全部ぶつけるにはまだとげが大きすぎるように感じた。

 違和感を抱えたまま育った子どもは、マッチョでなければ自己肯定間も持てないし、「尊厳」も「承認」もあるような環境をつくり出すのはさらに難しいだろう。

 本書の中にある言葉たちを子どもの状態にあわせて伝えていくこと。そうして視点を増やすことが重要であり、社会学の入門書といいつつ世の中ってこうだから、こう振る舞うべきだ!のような、ある意味指南書のような体裁が非常に引っかかるのだ。

 書いてあること自体は非常におもしろいのだ。
2章の「<社会>と<ルール>」、6章の「<生>と<死>」8章のSF本紹介など、「社会学としては」ここをもっと掘り下げた方がおもしろくなるだろうにという部分が多々ある。生と死を語る場面はともすれば宗教的であったり、説教チックになりがちなものなのだが、そうではなく、地に足をつけた宮台真司が見て取れる。非常におもしろい。
最後の方に出てくる<社会>は自分がコミュニケーション可能な範囲で<世界>がありとあらゆるものというフレーズ一つでも、輪郭がくっきりしてものすごい考えさせられる。そこから"社会学"が見えてくるこの手の言葉こそ大事にして深めてほしかった。

 結局アカデミックなのか自伝小説なのか、入門なのかライフハックなのか「14歳の親のための社会学」と「14歳からの宮台真司」のどっちつかずで終わってしまいメッセージがぶれてしまっている。教科書にもドリルにもなり得ない、参考書である。

 そして読んでいるうちに必ずこれは最後に書いてあるなと思ったフレーズが書いてあった。
娘が14歳になったら、親として、ひとりの大人として、自分はどんなことを語るだろう??。そう考えながら、この本を書いた。


やはり壮大な自分語りである。

参考:「14歳からの社会学」 チャレンジングだなぁ - 教育のヒント by 本間勇人
宮台真司『14歳からの社会学』 - martingale & Brownian motion
宮台真司・「14歳からの社会学」幸せになるのに必要な力って??「週刊ミヤダイ」 - 偽善者キツィこのブログ - Yahoo!ブログ